「目元を拭いても拭いても、すぐに涙で茶色くなってしまう……。」 「ドッグフードの工夫や、健康維持のサプリも試したけれど、なかなかスッキリしない。」
マルチーズやプードルなどの白い犬を飼っている方にとって、目元の健康管理は大きな悩みです。そして、多くの飼い主さんが最終的に検討する選択肢が、動物病院での「鼻涙管通し(鼻涙管洗浄)」です。
しかし、いざ検討し始めると「費用はいくらかかるのか?」「リスクはないのか?」といった不安が尽きないものです。今回は、鼻涙管通しのリアルな費用相場から、知っておきたい注意点、再発防止を目指すための本音の対策まで、詳しく解説します。
鼻涙管通し(洗浄)とは?目元の環境を整えるための選択肢
鼻涙管が詰まるメカニズムと目元のトラブルの因果関係
犬の涙は、本来であれば目を保護・洗浄した後、目頭にある「涙点」という小さな穴から「鼻涙管(びるいかん)」という極細の管を通り、鼻の奥へと流れていく仕組みになっています。
しかし、この鼻涙管がさまざまな理由でスムーズに通らなくなることがあります。
- 物理的な詰まり: 慢性的な炎症によって、剥がれ落ちた細胞や粘液、老廃物が管の中に蓄積し、道を塞いでしまう状態です。
- 構造的な問題: トイプードル、チワワ、シーズーなどの短頭種や小型犬は、鼻涙管が生まれつき非常に細かったり、曲がっていたりするため、わずかな汚れでも滞りやすい傾向にあります。
こうして行き場を失った涙が目から溢れ出し(流涙症)、常に被毛を濡らし続けます。濡れた状態が続くとバクテリアが繁殖しやすくなり、特有の変色(涙やけ)が発生します。鼻涙管洗浄は、この管に生理食塩水などを流し込むことで、物理的に通りをスムーズにする処置を指します。
処置を検討する目安:毎日のケアだけでは追いつかない場合
目元の健康維持には、まず「食事のバランス」や「こまめな清拭」が大切ですが、それらで期待した変化が見られない場合は「物理的な滞り」の可能性があります。
以下のような様子がある場合、動物病院での相談を検討するタイミングかもしれません。
- 拭いてもすぐに湿る: ケア後、短時間でまた目頭が濡れてしまう。
- 涙に粘り気がある: サラサラした涙ではなく、粘り気のある涙が出ている(管の中の環境変化のサイン)。
- 食事改善を継続しても変化が乏しい: アレルギー配慮のフードなどを数ヶ月徹底しても、溢れ出す涙の量に変化がない。
出口である鼻涙管が物理的に塞がっている状態では、内側からのアプローチだけでは溢れ出す現象を抑えきれないことがあります。
「洗浄」と「手術」の違い:詰まりをリセットする仕組み
- 鼻涙管洗浄(フラッシング): 注射器で生理食塩水を注入し、水圧で中の汚れを鼻へ押し出す処置です。軽度の滞りであれば、この「リセット」で目元の環境が整いやすくなります。
- 鼻涙管の再建手術(シリコンチューブ挿入): 洗浄を繰り返してもすぐに再癒着してしまうような重症例では、外科的な介入が検討されることがあります。鼻涙管の中に極細のチューブを一定期間留置し、物理的に新しい通り道を確保する処置です。
気になる費用相場:麻酔の有無で変わるリアルな金額
鼻涙管通しの費用は、動物病院の設備や処置の精度、そして「麻酔をかけるかどうか」によって大きく変動します。
無麻酔での処置:数千円〜1万円前後の目安
愛犬の性格が穏やかで、目元を触られても落ち着いていられる場合、無麻酔で行われることがあります。
- 費用目安: 3,000円〜10,000円程度
- メリット: 麻酔のリスクや検査費用を抑えられ、身体的・経済的負担が比較的少ないです。
- 注意点: 犬が動くと危険なため、徹底的な洗浄が難しい場合があります。
全身麻酔での処置:3万円〜7万円程度かかる理由
根本的な改善を目指し、奥までしっかり洗浄する場合は、全身麻酔下での処置が推奨されます。
- 費用目安: 30,000円〜70,000円程度
- 内訳の例: 麻酔前検査(血液検査等)、麻酔料、処置代、入院(半日〜1日)、処方薬など。
- メリット: 痛みや恐怖心を与えず、奥の汚れまでアプローチできます。スケーリング(歯石除去)など、他のケアと同時に行えることもあります。
知っておきたい「限界」と「注意点」:後悔しないために
高い費用をかけて処置をしても、必ずしも「一度で悩みから解放される」とは限りません。
「処置後すぐに再発した」ケース
鼻涙管が長期間の炎症で癒着していたり、骨格的に管が急激に曲がっている子の場合は、洗浄しても短期間で再び滞ってしまうことがあります。これは処置の成否ではなく、個体差による限界と言えます。
精神的な負担への配慮
無麻酔処置で強い違和感や恐怖を感じた子は、その後の家庭での点眼や目元ケアを嫌がるようになってしまうリスクがあります。愛犬の性格を考慮し、獣医師と相談して最適な方法を選びましょう。
涙が出る「原因」は他にもある
鼻涙管洗浄は「排水溝の掃除」です。しかし、原因が「涙の過剰な分泌(逆まつげ、アレルギー、眼疾患など)」にある場合、管を通しても根本的な解決にはなりません。「なぜ涙が多いのか」という総合的な診断が不可欠です。
リスクとデメリット:専門的な視点からの理解
医療行為には必ずリスクが伴います。
- 全身麻酔の負担: 特にシニア犬や超小型犬にとって、麻酔は臓器への負担や体温低下のリスクがあります。事前の検査と丁寧な説明を受けることが重要です。
- 物理的な損傷のリスク: 非常にデリケートな管にカニューレを通すため、粘膜を傷つける可能性があります。経験豊富な医師に依頼することが推奨されます。
- アフターケアの重要性: 処置後の点眼を怠ると、炎症から再癒着を招きやすくなります。飼い主さんの継続的なケアがセットであることを理解しておきましょう。
成功率を高めるために!確認すべきチェックリスト
- 眼科の知見が深い獣医師か: 専用の器具や拡大鏡を用いた繊細な処置が可能か。
- 他の原因(歯やアレルギー)を否定できているか: 上顎の歯のトラブルが鼻涙管を圧迫しているケースもあります。
- 再発防止プランがあるか: 処置後の食事管理や水分摂取、ケアの方法まで相談に乗ってくれるか。
- 見積書を書面でもらう: 当日の追加費用などで慌てないために。
まとめ:鼻涙管通しを検討している飼い主さんへ
鼻涙管通しは、滞った環境を一度リセットするための有効な手段ですが、「魔法」ではありません。
「内側からの健康維持(食事・水)」と「外側からの医療的処置・ケア」を両立させることが、目元の健やかさを守る唯一の道です。費用やリスクを正しく理解した上で、愛犬にとって最も心地よい選択をしてあげてくださいね。
